会長挨拶

第73回日本胸部外科学会定期学術集会 分野会長 (食道)
徳島大学大学院医歯薬学研究部 胸部・内分泌・腫瘍外科学分野
丹黒 章

丹黒 章

碓氷章彦先生を統括会長として2020年10月28日(水)から11月1日(日)まで名古屋国際会議場において開催予定でありました第73回日本胸部外科学会定期学術集会は新型コロナウイルス肺炎の国内外の感染拡散状況を鑑み、全プログラムをWeb上での配信に決定いたしました。食道分野の講演は10月30、31日に集中して配信いたしますが、Postgraduate Courseと、今学術集会食道分野の注目のセッションであるテクノアカデミー「専門医試験ビデオ審査のポイント」はオンデマンド配信し、期間内であれば、ご希望の時間に何度でも視聴できます。特別企画「食道癌手術におけるカダバートレーニングの実際と将来展望」、ビデオシンポジウム「根治性と合併症軽減の両立を目指した郭清手技」、パネルデイスカッション「高齢者食道癌治療」、要望演題③「より生理的で安全な食道再建臓器とルートを求めて」、④「リスク症例に対する対策:集学的治療とチーム医療の工夫」は10月30日に、要望演題①「この症例をどう診断し治療する」、②「術後合併症を回避するための術式の工夫」と多くの教訓を得られると好評の食道困難症例検討会は10月31日に配信いたします。ビデオ「われわれの手技」ならびに一般口演はオンデマンド配信いたします。

碓氷会長が掲げられた本定期学術集会のテーマは「Future Prospectives」です。術前化学(放射線)治療の導入で、切除不能進行食道癌も術前化療でダウンステージングできれば根治切除が可能となり、治療成績は飛躍的に向上して参りました。食道癌に対する手術も半数以上に胸腔鏡手術が導入され、より精度の高い根治術が普及してきました。しかし、NCDの検証が示したものは、Low volume施設での手術死亡率はいまだ高く、低侵襲であるべき胸腔鏡下手術の方が、開胸よりも手術時間は延長し、合併症は増えているという結果でした。Precision Medicineを目指したゲノム医療、縦郭鏡下手術やロボット手術の保険適応、分子標的治療や免疫チェックポイント阻害剤の導入による集学的治療の進歩など食道癌治療体系が大きく変わろうとしています。難度が高く、手術時間も長い食道癌根治手術を完遂した後も密度の濃い周術期管理を求められる食道外科医への“働き方改革”実現も大きな課題で、10年後を見据えた「Future Prospectives」がまさに必要です。

2020年7月開会予定であったオリンピックも新型コロナウイルス禍により延期となりました。前回開催の東京オリンピックの翌年1965年10月に第18回日本胸部外科学会定期学術集会が、教室の初代教授である高橋喜久夫教授により、徳島で開催されました。そして、この会期中に、日本食道学会の前身である第1回食道疾患研究会が徳島で産声をあげました。日本食道学会はその後、外科だけでなく基礎、病理、内科、放射線科などの診療科横断的な食道という臓器に関する総合的な学会へと発展してきましたが、本年が日本食道学会発足55周年であります。その記念すべき第74回日本食道学会学術集会を12月10、11日に徳島で開催いたします。この食道学会とも連動した有意義な企画を準備しておりますので、皆様のWeb参加をお待ちしております。

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