第74回日本胸部外科学会定期学術集会 会長
慶應義塾大学医学部 外科学(心臓血管)
志水 秀行
このたび、第74回日本胸部外科学会定期学術集会を会長として開催する機会を頂きましたこと、会員の皆様に改めて心からの感謝を申し上げます。淺村尚生分野会長(呼吸器)、北川雄光分野会長(食道)と共に、プログラム委員の先生方をはじめとする多くの方々のご指導、ご協力を賜りながら、教室員一同・事務局が一丸となって鋭意準備を進めております。
第74回定期学術集会のテーマは、「未来のための今」とさせて頂きました。これは幕末のころ、彰義隊と官軍の戦いにより、遠くで砲声がこだましているのを耳にしながらも決して講述を止めなかった福澤諭吉の「未来を見据えよ。今のための今ではなく、未来のための今を生きよ。」という教えに基づく言葉です。より高度な外科医療を追求するためには、現状に満足することなく、われわれ自身が最新の知識や技術を身に着けようとする不断の努力を継続しなければなりません。また、さまざまな治療法を客観的に検証し、それらの価値を見極め、優れたものであれば積極的に取り入れ普及させることも重要と考えます。
さらには新型コロナウィルス感染症・外科医の減少・働き方改革への対応など、直面するさまざまな課題に対して、叡智を結集して解決し、力強く前進を続けるための環境を整えることも必要と考えます。輝かしい未来を実現するために、今、われわれが行うべきことを改めて考え、正しく歩みを進める有意義な学術集会にしたいとの強い思いを「未来のための今」という言葉に重ねさせて頂きました。
日本胸部外科学会はこれまで胸部外科領域の学術的発展・医療の安全性向上・後進の育成に尽力し、それを実現・牽引して参りました。その伝統ある学会の定期学術集会として、心臓血管外科・呼吸器外科・食道外科それぞれの分野における最新情報の共有や活発な討論を通じて教育・診療の向上や国際交流を図るとともに、分野会長がともに同門であるメリットを最大限に生かして3分野の絆をより深めながら、しっかりと役割を果たしたいと考えています。
会期は2021年10月31(日)~11月3日(水・祝日)の4日間、会場はグランドプリンスホテル新高輪を予定しています。新型コロナウィルス感染症により状況は流動的ですが、いかなる状況であっても未来を見据えた実りある学術集会を目指す所存ですので、多数の皆様のご参加、素晴らしい演題のご応募を何卒よろしくお願い申し上げます。
末筆ながら、皆様のご発展と新型コロナウィルス感染症の一日も早い収束を切に願っております。
第74回日本胸部外科学会定期学術集会 分野会長(呼吸器)
慶應義塾大学医学部 外科学(呼吸器)
淺村 尚生
この度、第74回日本胸部外科学会定期学術集会、分野会長(呼吸器)を拝命いたしました慶應義塾大学の淺村尚生です。有意義な学術集会となりますよう、創意工夫して参りたいと思いますが、宜しくお願いいたします。
もともと、分野別会長制が導入された背景には、春の呼吸器外科と、秋の胸部外科の学術集会をいったい運営することで、より大きなテーマを取り上げ、無駄な重複を避け、より充実したプログラム構成を可能にすることにあったと理解いたしますが、残念ながら今年度は日程的にこれを実現することができませんでした。会員諸兄に、これをあらかじめご報告しておくとともに、来年度からの取り組みに期待を致したいと存じます。そうは申しましても、春期の呼吸器外科学会のプログラムを十分参考にさせて頂いております。
また、コロナ禍の影響により、学術集会の運営は予測不可能なものとなりました。そのときのコロナ禍の状況次第で、対面式の開催になるのか、オンライン形式のものになるのか、予想がつかないわけで、私が2017年に世界肺癌学会と日本肺癌学会を同時開催で主催させて頂いたときとは、隔世の感があります。私自身は、年に一度、直接膝を交えて議論することで新たな方向性を築いていく学術集会の在り方が、オンラインという新技術によって格段に進化するとは到底思えません。どんなに先進の録音再生技術の進歩があっても、素晴らしいコンサートホールで聴く音楽家の生の演奏を凌駕することは、なかなかできないのと同じでしょう。また、学術集会は、集会そのもののみならず、多くの出会いや、情報交換の貴重な場を提供するものでもあります。私たちは、こういったところに学術集会の価値を感じてきたのではないでしょうか。
そうは申しましても、コロナ禍の制約の中で、新しい学術集会の在り方を模索する必要性にも迫られております。一日も早く、コロナ禍が終息するよう祈念致しますとともに、この第74回日本胸部外科学会定期学術集会が新しい胸部外科学発展の一つのマイルストーンとなりますよう鋭意努力して準備を致して参りたいと思います。宜しくお願い申し上げます。
第74回日本胸部外科学会定期学術集会 分野会長(食道)
慶應義塾大学医学部 外科学(一般・食道)
北川 雄光
この度、第74回日本胸部外科学会学術集会におきまして食道分野担当の分野会長を仰せつかりましたこと誠に光栄に存じております。
本学術集会の統括会長である本学志水秀行教授、呼吸器分野担当分野会長淺村尚生教授とともに慶應義塾大学外科学教室所属の私共3名が一緒に、伝統ある本学会の学術集会を担当させていただきますことはこの上ない栄誉と存じております。本学外科学教室が2020年に創設100周年を迎え、次の100年に向かって歩み出すこの2021年にこのような機会を与えていただけましたこと、本学会会員の全ての皆様に心から感謝申し上げます。
昨今、研究会も含む様々な学術団体が乱立し、学術集会においても重複した内容が多いこと、学術集会への参加そのものが外科医の業務負担になっているのではないかと懸念が呈されている中で、本学会澤理事長の強いリーダーシップのもと、「胸部外科」としての独自性、特徴を発揮することが求められています。そこで、私たち食道分野においては、食道疾患に関わる領域横断的学術団体である日本食道学会と密に連携し、2021年9月に開催される第75回日本食道学会学術集会(会長:日本医科大学消化器内科学 岩切勝彦教授)との重複を極力避けながら実りあるプログラムを構成すべく検討して参りました。
胸部外科における領域横断的シンポジウムとして企画させて頂いた「胸部縦隔進行がんの手術戦略」では、日本胸部外科学会ならではのダイナミックなご発表をいただけるものと期待しております。がん集学的治療が進歩した今日においても、外科手術は高度進行・難治癌を根治するための最後の砦であり、胸部外科領域における広い知識、経験、技術を持って取り組むべき重要な課題です。パネルデイスカッション「ロボット支援下食道癌手術の定型化と課題」では、近年多くの領域で導入が進んでいるロボット支援手術が、食道癌術後合併症を減少させることができるのか、局所制御の質を向上させて予後を改善することができるのか、世界的にもいまだエビデンスがない中での討論となりますが今後の学術的検討課題を見出すことができるのではないかと考えております。また、ワークショップでは食道切除再建後の長期QOLの評価と改善策を取り上げ、長年明確に論じられることの少なかったテーマに迫りたいと思います。さらに、胃切除後で再建臓器として胃管使用できない場合の再建臓器を従来から標準であった結腸とするか、小腸を用いるのか、経験と実績に基づく熱いデイベートを展開していただきます。診療領域の専門分化、細分化が進む中で食道外科医にとってはともすると「近くて遠い」領域になりがちな心臓血管、呼吸器領域の最先端の知識や技術を知ることで、新しい挑戦、さらなる技術的進歩のきっかけとすることができるのではないかと期待しております。皆様方の積極的なご参加を心よりお待ち申し上げます。
© 2021 The 74th Annual Scientific Meeting of the Japanese Association for Thoracic Surgery